普遍的なもの2011/03/25 22:53

2009年11月に放送された「雨はすべてを洗い流す」が再編集され札幌市内のシアターキノ(市民出資のNPO映画館)で上映された。■後藤ディレクターから上映案内のチラシをもらったときには「プロ野球の開幕日で劇場にはいけないな」と思っていた。それが3月11日の震災で日本中が大変なことになってしまい、プロ野球開幕もセパ両リーグとも4月12日なった。■「雨は・・・」は旭川を舞台に在宅死を迎える4人の末期ガン患者と残される家族たち、それを支える訪問医師の姿を追ったドキュメンタリー。亡くなった娘の骨を抱えて、函館、青森、山形を鉄路で旅する老いた父親の姿も描かれている。■上映後、ティーチインのゲストでマイクを持った後藤ディレクターは「番組を制作した当時はリーマンショックや何やらで世の中、絶望的になっていた。だったら必ず訪れる死を見つめ、終わりの中に希望を見いだせないかと考えていたのだけれど・・・。どうなんでしょう、今、大震災や原発事故という大変な状況の中で、死をテーマにした作品を上映するのはね。とも思ってしまうし、見ている方にとってもどんな風に見えたのでしょうか」と話す。■私は救われた心境だった。細かな言い回しは少し正確ではないと思うが、医師が「終末医療は病よりもその人の人生を見つめなければならないがそれができていない」と自戒する。また「患者の苦しみの方を向いてしまうが、看取る者、残された者の悲しみや苦しみもある」という趣旨のことを話す場面もある。そして、青々と伸びる水田の稲や雨、ラベンダーの花という景色の中に無名の市民が確かに生きてそして亡くなっていく様子が映し出されている。■今、どうしようもなくどんよりと気が重く、閉塞感の中で、人生のありようを確認することの意味は大きい。人間の尊厳は普遍的なものだと思うから。■3月25日は私にとっては特別な日でもある。その日にこの作品を見た偶然も何か不思議な感じを抱く。■2009年11月のブログ⇒http://kondahomare.asablo.jp/blog/2009/11/28/4724498