バッケンレコード2012/01/13 03:17

ジャンプ台の最長不倒記録をバッケンレコードという。その競技場で転倒せず、もっとも遠くへ飛んだ記録・・・ヒルレコードとも言う。7日の雪印メグミルク杯で宮の森の記録が更新された。新記録を樹立したのは22歳の栃本翔平選手だ。高校時代に日本代表に選ばれ、2007、2009年の世界選手権では日本の銅メダルメンバー、2010バンクーバーオリンピックの代表でもある。■宮の森はノーマルヒル。最近はすっかりその言い方はしなくなったが、札幌オリンピック当時は70メートル級とも言った。オリンピックメダル独占の舞台だった。現在ではジャンプ競技場の規模、プロフィールを紹介するには、採点の基準となるK点と並んでヒルサイズ(HS)で紹介するようになった。宮の森はK点が90メートル、HSは100メートル。そして、従来のバッケンレコード(ヒルレコードは)2006年1月のFISコンチネンタルカップで来日したA・バーダルの飛んだ102.5mだった。栃本選手はこれを1.5m更新した。■驚いたのは栃本選手の着地。左右の足を前後させ、両手を左右に広げる「テレマーク」姿勢をとっている。着地姿勢はジャンプの採点方法の1つ「飛型点」に大きく影響する。栃本選手はバッケンレコードの大飛行にも関わらずほぼ完璧に着地した。通常、飛び過ぎると着地が難しくなる。転倒を避けるため両足を揃えた「一足ランディング」などと言われる着地姿勢になりがちだ。今、話題の高梨沙羅選手が昨年、大倉山で141を飛んだ時も尻餅寸前のきわどい着地だった。■栃本選手はK点も、ヒルサイズも、バッケンレコードも越えて、それでいて、さらりと着地して見せた。さすがだ。■2010年バンクーバー出発前に葛西紀明選手が大倉山で145メートルのバッケンレコードタイ記録を出し、去年は高梨沙羅選手が141メートルの女子最長不倒距離を樹立して話題を呼んだ。その度に出る「バッケンレコード」という言葉。その言葉に接するとき私はちょっとした緊張感で体がこわばる。2005年3月25日に大倉山で145メートルを飛んだ金子祐介さんを取材し、2008年に番組を放送した経験と無関係ではないと思う。■今年もまた大倉山にジャンプの季節がやってきた。記録の向こうにあるものまで心に銘じて放送に携わろうと感じさせてくれた人たち。その感謝の思いに自分はどれだけ答えられているのだろうか・・・。この季節、また自己嫌悪ともいえる気持ちになってしまう。■今年のUHB杯ジャンプまであと1日と少し・・・。無事に!と願うばかりだ。▼UHB杯ジャンプ大会1月14日(土)