厳格&危機感①2013/05/20 01:09

今夏モスクワで行われる陸上の世界選手権。マラソンと競歩の日本代表が発表され、間もなく1ヶ月になる。◆発表前から「マラソンの代表枠は5だが、全てつかうとは限らない」という話は聞こえてきていた。ただ、私自身は「そうは言ってもやはり5人を選ぶのではないか」と思っていた。それだけに「女子3人」の発表に正直、驚いた。衝撃というか、陸上界が感じている「危機感」と再建への強い「覚悟」に震えがきた。◆予想した顔ぶれは、男子が前田和浩(九電工)、堀端宏行(旭化成)、川内優輝(埼玉県庁)、藤原正和(ホンダ)の選考会日本人トップの4人は確実。あとは選考4大会の日本人2番目の選手の内、海外勢の顔ぶれと日本人トップとのタイム差から山本亮(SGHグループさがわ)を予想していた。ロンドンを決めた前年のびわ湖より確実に「強くなっている」という印象も残していたが、代表入りしたのは中本健太郎(安川電機)だった。◆一方、衝撃の結果となった女子は、既に内定している木崎良子(ダイハツ)に加え、各選考会日本人トップの福士加代子(ワコール)、那須川瑞穂(ユニバーサルエンターテインメント)、そして、即内定の条件をクリアした木崎には遅れをとったが十分な内容を示した野口みずき(シスメックス)の4人。あとは伸びしろ、可能性という期待値も含め大阪で健闘した渡辺裕子(エディオン)。場合によってはロンドンは記録限定の選考規定だったが、代表に十分の内容という見直し議論がされるかもしれないという特例措置があれば赤羽有紀子(ホクレン)の可能性もゼロではないと考えていた。ところが発表された結果は、5人目だけでなく、那須川も代表から外れた。◆つづく

厳格&危機感②2013/05/20 01:10

今回の選考で明確だった点を整理するとまずは①選考規定に厳正・厳格、ルール遵守という点が上げられる。選考の過程ではテーブルにのせるか否かの手順のところだ。◆「世界と戦える選手」「代表に値す力」という視点から見れば、ロンドンマラソンの赤羽は十分な内容だった。もし、赤羽が指定4大会(北海道、横浜、大阪、名古屋)の日本人3位以内に入っていて、選考のテーブルに乗っていれば、代表に入っていた可能性は大きい。しかし、赤羽は選考のテーブルにあがる条件をクリアできなかった。トラック競技の予選などで通過条件が3着プラス2などの場合、プラ2に入れなかった選手のタイムがどんなに速くても、例え他の組の1着より速かったとしても、3着以内の着順をクリアした選手の通過を覆して次のラウンド進出を果たすことはあり得ない。というのと似ている。◆つづく

厳格&危機感③2013/05/20 01:13

②つめは選考のバーは高くし、選考委員の「眼力」も含め内容にも踏み込んで「厳選」するという点。これは選考のテーブルに乗った選手から代表に選出する過程のところである。◆今回、「基準タイム」や「記録との乖離」といった要素から「タイム」が選考でクローズアップされているが、代表入りした選手とそうでない選手を分けた点を見ると「勝負をしたか」「戦う気概を見せたか」「見せ場をつくったか」という「勝負」に関わる要素、とりわけ「チャレンジ」する姿勢を重視したことが伺える。◆男子の例でいえば、これまで選考において福岡、東京、びわ湖といった大会は別大より優先される傾向にあったが、今回、別大を走った選手が代表入りした。確かに、タイムも山本より、中本の方がよかったが、それ以上に川内と展開した「勝利を求める姿勢」に選考委員は着目したきらいがある。選考もⅢ番目の段階に進んだ場合、どのレースが良かったか、どの選手が評価に値するのか、という議論を行い。内容を厳しく吟味して選出したことを伺わせる。女子でも日本人トップではなかったが、野口みずきの代表入りも「火花が飛び散るような勝負」をしていたからだろう。◆那須川が「勝負をしていなかったのか」と問われれば、決してそんなことはなかったが、それでも「足りないものはあった」といわれれば否定できない。那須川のキャリアを思うと同情は禁じ得ない。モスクワでどんなレースをしてくれたのだろうかとむなしさもある。渡辺裕子についても同様である。◆今後の選考の方向性を示したという今回の代表選考。目標設定を高く掲げ、勝負する気概をもってチャレンジし続けることが、代表への道筋ということなのだろう。
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Ⅰ)3各大会(男子:福岡・東京・びわ湖、女子:横浜、大阪、名古屋)で基準タイムをクリアした日本人トップ⇒内定。Ⅱ)4月30日までに行われる指定海外マラソンで派遣タイム突破で候補Ⅲ)Ⅰ&Ⅱで内定者・候補者がでない場合、指定4大会(Ⅰの3大会に加え男子別大、女子北海道)の3位内の者から選考。・・・木崎はⅠにより内定、他の選手はⅢで代表へ。