朝日三望台シャンツェ2013/07/17 15:59

スキーのサマージャンプ国内開幕戦が7月14日、士別市朝日町で行われた。ソチシーズンの夏開幕戦、女子の優勝は高梨沙羅選手だったので多くのニュースで大会の結果を目にした人も多いはず。男子は清水礼留飛(雪印メグミルク)が1回目トップの小林潤志郎(東海大)を逆転、世界選手権男女混合団体金メダリストの伊東大貴(雪印メグミルク)らを抑え優勝した。少年組の優勝は佐藤幸椰(札幌日大高)だった。◆会場の三望台シャンツェはミディアムヒルとスモールヒルが並ぶツインヒル。ミディアムはK=60、HS=68というプロフィール。2008年、北海道文化放送が制作放送したドキュメンタリー「バッケンレコードを越えて」に携わった私には、このジャンプ台に特別な思いがある。◆オリンピック代表を目指しながら、シーズン開幕直前の海外合宿でアクシデントに見舞われた金子祐介さん。ジャンプには滅多に起きない大ケガをする。一命はとりとめたが、社会生活への復帰も危ぶまれた。多くの人の支えがあり金子さんは失望のどん底から復活を果たす。番組は「共に生きる」をテーマに人生の苦難を越えていく金子さんとその妻ひとみさんの姿を放送した。◆2006年7月26日、金子さん、ひとみさん、そして、金子さんの両親、妹さんたちがこの三望台シャンツェにいた。金子さんが、ケガ後初めてジャンプを飛ぶ・・・。家族は早朝札幌を出て道北の小さなジャンプ台に来たのだった。◆この初飛びの様子、そして、金子さんに駆け寄るひとみさんの姿は、「バッケンレコードを越えて」ではもちろん、多くの番組で紹介された。出たことのないような低いゲートから出た金子さん。スタート地点には監督の菅野範弘さん、カンテ脇には父親の茂さん、ブレーキングトラックの脇には母、葉子さん、妹の真弓さん、コーチの須田健仁さん、もちろんひとみさん。練習中の多くの選手たちも見守っていた。飛距離は小さな台のK点にも届かなかったが、ほんとに大きな大きなジャンプだった。撮影したのはひとみさん、真弓さんもデジタルカメラのムービー機能を使いこの大きなジャンプを撮っていた。◆14日の試合を取材することになった私はこの感慨のジャンプ台を訪れる機会を得た。スタート地点から朝日町の町並みや上士別の方も眺めた。そして、思い出したことが、あった。ひとみさんが撮影していたのは、金子さんの復活ジャンプだけではなかった。オレンジのワンピース、銀色のヘルメットをがぶりスモールヒルで練習していた小さな女の子もビデオカメラにおさめていた。あの復活ジャンプの日、同じ場所に、当時9歳の高梨もいたのか・・・、しかもひとみさんは、その姿を撮影していたんだと。「奇跡は思いの積み重ね」、ドラマ「バッケンレコードを超えて」の中にでてくる私の好きなセリフの1つだ。