カンタ2015/03/20 22:07

有名スポーツ選手が猿のぬいぐるみをカバンにいれて遠征にも持ち歩いていた。そのぬいぐるみの名は「カンタ」・・・そんな話を思い出した。■2006年、原田雅彦さんが引退した数日後、上川町でトークショー、講演形式のおつかれ様の式典が行われた。原田さんは現役引退のワケ、長野五輪の裏話などを楽しそうに話し、ふるさとの人たちを笑わせた。■質問コーナーになって、男の子がマイクを持って立つ。「一番思い出に残る大会は?」。間髪入れず原田さんは「長野オリンピックでしょ」と答える。あまりの即答に、司会者が、他にも聞きたいことがあったら聞いてごらんと追加質問を促す。男の子は「スランプのときどうしますか」と聞く。原田さんは「今、どう?調子は悪い?上向いてる?」と聞き返すと男の子は「上がっているように思う」と答える。原田さん、「そうですよ、そうそう、スランプなんてナイ、ポジティブに思っていればいいです」と答える。■上川の男の子は高梨寛大君だった。この春で明治大学を卒業、ユニバミックス団体でのメダルを手土産にカンタも現役に別れを告げる。卒業おめでとう!

沙羅、有希、そして優梨菜2015/03/07 13:37

3月6日、札幌・宮のジャンプ競技場。宮様国際スキー大会のジャンプ女子は伊藤有希(土屋ホーム)がK点ジャンプを揃え快勝した。風が不安定、パッカーさんが雪踏みをしてくれたとはいえ、3月の雪、しばらくぶりの試合ということもあり、ランディングバーンは足元をとられやすい難しいコンディションだった。ユニバシアード男女団体金の小林諭果(早稲田大)、UHB杯など今季複数回優勝の茂野美咲(CHINTAI)らが足をとられ転倒した。(小林は転倒しながらその回3位だったが・・・)■高梨沙羅(クラレ)に元気がなかったのが少し、心配だったが、優勝が決まった直後に、上位3人が握手をかわすシーンがあった。日本の女子ジャンプの希望を象徴するものだった。伊藤、高梨、そして山田優梨菜。初めて女子ジャンプがオリンピックで行われた昨年のソチで日の丸をつけた3人だった。有希は優梨菜の肩を抱いて3位を祝福した。

今こそ将来への戦略を②2014/02/24 00:01

ソチでの日本チームの活躍には「奇跡」や「幸運」と感じるところが大きい。もちろん、棚ぼたで栄光はありえない、奇跡や幸運は、アスリートの「不屈の魂」が呼び込んだもの。その奇跡に心打たれたし、日本を救った。ただ、日本選手団は「狙った」競技・種目では「負けた!」気がしてならない。好結果を出したものはチームジャパンが戦略的につかみ取ったものではなかったような、メダルプロジェクトは成功していなかったように思う。◆メディアを含め世論、国民はどれほど冬のスポーツ、アスリートを支えてきのだろうか。「何だよ、こんな時だけ!」「もっと勉強しろよ!」と批判を受ける場面も多い。◆個人的には、①仕分け後の五輪②冬のスポーツを育んできた地域が被災した後の最初の冬季五輪③2020年五輪ホスト国決定後の五輪という3つの視点から注目していた。◆バンクーバー五輪のシーズンでもあった2009/2010。「仕分け」が話題になった。文科省が管轄するスポーツ予算は大幅に見直された。バンクーバーは従来の予算で実施されたが、翌2010/2011から強化費は大きく削られた。◆ジャンプでいえば、ワールドカップへのステップとなるコンチネンタルカップへの派遣を取りやめた。ワールドカップ遠征も航空運賃と物価の安い海外での滞在費を勘案して、出国したら何ヶ月もヨーロッパに滞在。コーチは同行せず欧州滞在のコーチが現地で合流するなど経費を切り詰めた。◆バンクーバー後、強化体制が大きく変わったカーリングも、小笠原らの復帰、その小笠原たちが熱意を注いで実現したカーリングホールの完成など、いわば「私立」で強化環境がつくられた。話題の選手、人気選手は自力で独自スポンサーを獲得していくような形もできつつあったが、その規模や支持基盤は十分といえるものではなかった。◆今回の五輪、スポーツを、郷土を思う「心」に支えられてきた。これからの4年、そして、2020年のホスト国として、スポーツ先進国に成長することが求められる。

今こそ将来への戦略を①2014/02/23 23:20

ソチ五輪が閉幕する。日本は自国開催の長野を除き過去最高の8つのメダルを獲得した。被災地に育った羽生結弦の金。41歳の葛西紀明らの活躍でジャンプが16年ぶり、ノルディック複合が20年ぶりにメダルを獲得。スキーは新種目のフリースタイル・ハーフパイプでもメダルをとった。際立つのはスノーボードがハーフパイプとアルペンで合わせて3つのメダルを獲得した点だ。かつて「問題児扱い」、一部に「白眼視」された歴史を持つスノーボードに日本選手団は救われた。◆メダルには届かなかったが、ジャンプ女子は世界をリードする存在であったし、女子モーグル、カーリング、スピードスケートも表彰台に迫った。未勝利に終わったといえアイスホッケーの女子も開催国枠で出場した98長野とは格段に違い、自力出場を果たしたことそのものに価値があるし、世界と互角に戦えるところまでレベルアップしている。◆更にエース、メダル候補と言われた選手を襲ったアクシデントもあった。モーグルの伊藤みき、アルペンスキーの湯浅直樹はケガ。複合の渡部暁斗、ジャンプの竹内択は病に見舞われた。竹内択は本来の彼の実力からすれば物足りないものだったし、モーグルの伊藤みきはスタートラインに立てず無念はいかばかりか。◆一方で、大会1月前にインフルエンザにかかったと聞いたときは絶望的な予想をした渡部がワールドカップでの表彰台を経てノーマルヒルでメダルを獲得したのは驚きだった。葛西の腰、伊東の膝など、サポートチームの存在が活躍を支えた要因だったのだろう。スノーボードの竹内智香も一度は日本を飛び出した積んだ経験が、日本チームとの自分の心の中での和解で成果を上げた。◆とはいえ「冬のスポーツ」に対するサポート体制には不安を禁じ得ない。(続く)

ソチへ 心つないで2013/12/27 01:58

スキージャンプ高梨沙羅、カーリング小笠原歩&船山弓枝、そしてアイスホッケースマイルジャパンを題材にした番組を12月28日(土)午前9時55分から北海道内で放送する。◆ほぼ、制作作業は終了し事前視聴をした。じんわりと目頭が熱くなる番組になっている。

五輪リハーサル2013/10/14 02:33

先日、スキージャンプの雪印メグミルクに所属する選手たちの話を聞く機会があった。トリノ、バンクーバーと2度の五輪を経験してきた伊東大貴選手は「緊張しないタイプなのだが、オリンピックでは緊張したというか、雰囲気にのまれてしまった」と振り返った。◆オリンピックのジャンプといえば日本のジャンプ選手としてはその代名詞的な存在でもあったのが原田雅彦さん。やはりオリンピックは違うと話す。レベルの高い大会は、ワールドカップや世界選手権でも経験できるが、そうした大会はジャンプ、あるいはスキーの選手だけ。オリンピックは選手村にいけば、競技、種目の違う選手がいる、町中に五輪マークや大会ロゴがあり、まったく違う雰囲気になる。◆その話を紹介したところ、競泳の田中雅美さん(シドニー五輪メドレーリレー銅メダル)は「3度目はきっと違うはず、今度は幸せを感じてその舞台に立てる、そうしたら自ずと良い結果が生まれる」と話した。◆オリンピックのリハーサルをしておくのは本当に難しい。選手の導線も周りにいる人も、取材や試合の流れもいつもと勝手が違う。特別対応はないし、雰囲気から変わってくる。自分を律して、最高のパフォーマンスを発揮する準備をしておかなければならないが、相当難しい。◆オリンピックで印象に残るのは柔道、恵本裕子の「よくオリンピックには魔物がいると聞いていたが私には神様がいた」というもの。◆3ヶ月半後に迫ったソチ五輪、多くアスリートに、魔物ではなく、神と出会ってもらいたいが、果たして・・・。

飛型点2013/09/23 22:42

ソチ五輪開幕まで4ヶ月あまり、ウインタースポーツ観戦の仕方を知っていると面白さが倍増する。◆スキージャンプの順位は点数で決まる。今、選手の点数を構成する要素は4つ。飛距離を点数に換算。飛型(ジャンプの美しさ)の採点。そして、風の要素と助走距離によって点数を増減するコンディションの変化を勘案して数年前に導入されたウインドファクター、ゲートファクターと言われるものだ。◆飛型点は空中の姿勢、迫力、そして着地姿勢などが採点される、飛型審判員は5人(3人に減らすことが検討されている)で、最高点、最低点をカットした3人の点数が採用される。一人の審判の持ち点は20点。満点は採用3人の合計で60点となる。着地で足をとられた転倒の場合、審判一人あたり10点前後の減点になるので、転倒しなかった場合と比べて30点ほど点数が少なくなる。◆一方、飛距離点はK点を60点として飛距離によって増減される。増減の単位はジャンプ台の大きさによって変わってくるが、大倉山などラージヒルは1メートル当たり1.8点。宮の森などノーマルヒルは1メートルあたり2.0点である。22日にサマーグランプリ(GP)が行われたカザフスタンのアルマトイのノーマルヒル(K=95)も1メートル当たり2.0点となっている。◆日本の高梨沙羅は2回目に着地で転倒したが、優勝した。得点の内容をみると、107.5mを飛んだ飛距離点は60点+(2.0×12.5)=85点。スタイルを採点される飛型点は着地失敗が大きく減点され30.5点(10.0+10.0+10.5)。従来の飛距離と飛型の合計点であれば2回目1本のジャンプでは115.5点を挙げている。115.5点は非常に興味深い点数である。K点ジャンプでテレマークを入れた場合の点数がだいたいこの115.5点なのだ。飛距離点60点+飛型点55.5(18.5×3)。◆この時の助走の長さ=ゲートの高さは他の選手と同じなのでゲートファクターは増減なし。但し、ジャンプに有利な向かい風が吹いていて、ウインドファクターでは13.2点の減点があった。従って2回目のポイントは102.3点だった。高梨の2回目のジャンプの結果に大きく影響したのは「風」だったと言える。◆ゲートファクターは咋シーズンまではチームの判断でゲートを下げた場合でも加算されたが、今シーズンは競技委員が競技進行の判断で変更した場合のみと変更になった。◆点数を得る作戦として、ゲートを下げることはなくなったが、不利になっても選手側がゲートを下げることは可能だ。意図したバッシングとは限らないが、飛び過ぎるゲート設定が群を抜く選手のジャンプを狂わすケースもあり、その点は警戒しなければならない。◆ゲートを下げることが出来ても下げないケースは大きく2つある。1つはそのまま飛んだだほうが不利にならないからというもの。もうひとつは勝負師の意地。怯んだ、引いた、という姿勢を見せず立ち向かう場合だ。彼がここから飛んだのなら我も飛んでみせる!といったところか。転倒しても10メートルも余計に飛べば飛型点の減点分を埋め合わせられる。HSを大きく越えれば、一足ランディングになっても立てたらもうけものだ。

幻のバッケンレコード2013/08/04 16:04

バッケンレコードとはジャンプ台の最長不倒記録。「不倒」だから、遠くに飛ぶだけではなく転倒せずに着地しなければならない。札幌大倉山のバッケンレコードは2012年に伊東大貴が記録した146メートル、女子の記録は2011年に高梨沙羅が飛んだ141メートル。夏の記録となると141メートルの葛西紀明。そして夏の女子は葛西賀子の131メートルである。◆4日、札幌市長杯大倉山サマージャンプで大ジャンプが飛び出した。飛んだのは高梨沙羅。距離は141メートル。自身の持つ冬の女子バッケンレコード、葛西紀明の夏のバッケンレコードに並ぶものだった。「マキシマム(踏切直後に空中姿勢が完了する空中の最高地点とされるところ)で、いつもと違うところだったので、どこまで行くのだろかと思った。空中は異次元のところだった。」と、もやもやを吹き飛ばすジャンプとなった。◆場内放送は、一旦、「バッケンレコード!」とアナウンスしたが、すぐさま訂正した。飛型点は10.0から12.0。「不倒」ではなく、ジャッヂはルール上の転倒と判定した。うーん、惜しい!「幻」のバッケンレコードだった。落下の重力を受けしゃがみ込むような姿勢となった高梨は両手をついていた。◆課題にしている飛型点では大減点だが、ここまでのジャンプをしてみせたのだから「もう、飛型はいいでしょう!」という気持ちになる。ジャンプの神髄!全てを吹き飛ばす「爽快!」「豪快!」「気持ちのいい」「楽しいジャンプ」だった。カンテ(踏切地点)の近くにいたコーチ陣は「ヤバい!」と思ったとか・・・。◆1998年のサマージャンプで原田雅彦は転倒しながら優勝した。この日の少年組優勝の小林陵侑も転倒しても勝った。去年、清水礼留飛は141.5mを飛びながらヘッドスライディングのように転倒した。原田さんは、テレマークが入らないと、とやかく指摘されていた現役当時、「その分飛べばいい」と考えるようにしたという。2.5ポイントの減点かける3人のジャッヂ、合わせて7.5点離されたとする。飛距離のポイントは、大倉山の場合、1メートルで1.8点。ならば、4メートル50余計に飛べばその差は埋まる。◆原田さんは大倉山のバッケンレコードを4度更新、初めて140の大台に乗せたのも原田さんだった。大倉だけではない、白馬、クオピオ、フィラハ、アイアンマウンテン、ラハチなど世界のジャンプ競技場でバッケンレコードを塗り替えてきた。ミスタースキージャンプであり、ミスターバッケンレーコードなのだ。

女子ジャンプの注目点2013/08/04 02:42

3日に札幌で行われたノルディックスキーのサマージャンプ。岡部孝信が優勝した。今年6月に全日本はソチ五輪のジャンプ男子代表を5人と明示した。そして、サマーグランプリ、ワールドカップでの上位成績で決めると・・・。その時、私は心の中で、「遠征にいけないメンバーにはチャンスがないということか」とつぶやき、岡部孝信の顔を思い浮かべた。もうおよそ20年に渡って言い続けているが、彼のニックネームは「逆転の岡部」。その異名の由来はまたのちのち書いていくとして、彼の挑む心は萎えていない。5度目の五輪代表へ逆転劇があるかもしれないぞ。◆さて、タイトルの「女子ジャンプの注目点」だが、きょう書くのは「高梨沙羅」でも、3日の試合で高梨に勝った「伊藤有希」でもない。すでに注目されているもの。高梨だけではなく伊藤有希だって皆、知ってるよね!今年2月のワールドカップ札幌大会2日目。伊藤有希は飛距離点と飛型点では上位に入っていた。ウインドファクター(風によってポイントが加減)で11位に止まったが、ワールドカップができる前、当時の女子世界最高カテゴリーの試合で勝ったこもとある。実力者、10代ダブルエースなのである。◆私が注目しているのは、その次のポジション。今のままでは世界に出て行っても、どのくらいできるか分からない、ここは埋めておきたい。心理の壁というものがある。抜け出してしまうと、返って楽というのがある。境界線上に立っていると、見えない何かに気づかぬうちに締め付けられて来る。そしたものにも打ち勝っていかないといけない。やれば出来る!はず

ジャンプ五輪派遣基準2013/07/29 02:11

ソチ五輪開幕まで200日を切った。およそ半年後の2014年2月7日が開会式だ。◆日本選手団の編成は参加するだけでなく、メダル、少なくとも入賞を狙えるレベルが求められる。これまで花形競技として優先的に代表を送り出してきたジャンプ競技も特別扱いはない。代表の枠は男子5、女子は最大で4。団体のある男子は5人を送り出すが、女子は派遣基準に達しなければ4人に満たない場合もある。◆選出の基準は昨季と今季のW杯(含むサマーグランプリ)などの世界大会で(1)8位入賞。(2)同期間内で10位以内に2回。(3)12位以内に3回。◆昨シーズンからということであるので、ワールドカップや世界選手権で8位以内のある女子の高梨沙羅、男子の竹内択、伊東大貴、葛西紀明、10位以内2回の清水礼留飛は基準をクリアしている(GPの優勝もある)。代表枠を超える複数の選手が基準をクリアする可能性もあるが、現実的には内定、もしくはかなり有力。代表になることではなく、本番で力を発揮することを見据えて準備を進める体勢を整えていくことになる。◆ドイツで開幕したサマーグランプリ、26日に行われた女子、28日に行われた男子、高梨2位、伊藤有希6位、竹内択が5位と派遣条件を満たす結果を残した。山田優梨菜も複数回が条件だが10位に入っている。◆国内大会では岡部孝信、渡瀬あゆみが優勝し、遠征メンバー帰り咲きをアピールする結果をだしている。代表が決まるのは年明けだが、夏から熾烈な争いは見逃せない。