不要なイメージは持たない2011/05/14 12:27

「はっぁ? 全然ダメだぁ↓」と驚いた表情でつぶやいたあと、福島千里選手は状況を飲み込んで「そりゃそっかぁ」と苦笑というか納得したような笑顔に変った。レース直後のインタビューに答えている最中、速報画面に女子200メートルの結果が表示され、23秒21の記録を確認したときの様子だ。■8月27日に開幕する世界陸上選手権のプレ大会として行われたワールドチャレンジ国際陸上テグ大会に行ってきた。取材の最大の目的は北海道ハイテクACの福島千里選手。全国的にも注目の選手だが、地元、北海道内では更に注目度は高い。今季初海外、しかも今季最大の目標に掲げている世界選手権と同じ舞台ということもありテグに向かったのだが、こちらの「力み」ようとは対照的に「自然体」「どのレースも同じように」を目指す福島選手を見て感心した。■海外での試合について尋ねると「海外だからとか日本だからとか、区別したり、決めつけたり、特別な印象は持たないようにしていきたい」との答え。区別や決めつけたイメージが結果に影響したら良くないし、レースの分析や判断に左右されることがないようにしていきたいようだ。■豪華なメンバーだった。女子200メートル優勝はオリンピック銀メダリスト、世界選手権4連覇濃厚のアリソン・フェリックス(アメリカ)。シーズン序盤とはいえ22秒38(追0.4)は今季世界ベストタイム。出場選手の自己ベストはフェリックスの21秒81を筆頭に5選手が福島選手の22秒89より速い!(マジかよ!)■福島選手は第8レーン。「1本なので始めから思い切り行った」というようにフェリックスと並んで直線に向いた。コーナー出口から加速していく感じで抜け出したフェリックスは別格としても2位争いは3人が並ぶ大接戦。4位の福島選手は2位と100分の5秒、3位と100分の4秒と超僅差。福島選手が自己ベストを出してもフェリックスにはかなわなかったが、向かい風の静岡で出した23秒13のシーズンベストなら2位もあったわけだ。惜しくも表彰台を逃したともいえるが、この段階としては国際招待レースの表彰台と同等のところにあると思うべきかもしれない。フェリックスらといても「場違い」感がない選手になっているのは間違いない。■出場選手のレベルの高さを上手く利用して記録を狙うにも一番外のレーンは恩恵を受けにくい。終盤の粘りはともかく展開的にも競り合いで追い上げられるのは記録が生まれるパターンではなかった。まあ、ヒートや準決勝を勝ち残るにはゴール前の100分の数秒の競り合いは重要かも・・・。■「走りは良いとはいえなかったかもしれないけれど、この時期に、ここで走れたのはよかった」「この差を忘れずに世界選手権に向かっていきたい」「(世界選手権で)このメンバーと走るには準決勝なり、決勝までに残らないといけない」「(デグに)絶対戻ってきて走りたい」と今後も目標に向かって前進する決意を新たにした。■今回、福島選手は世界選手権の下見と合わせて、上手くいけばA標準23秒00の突破も視野に入れていたのだろう。23秒2台で「ダメ」と発してしまったのはその辺の意識の高さからだろう。具体的な結果として表れてはいないもどかしさはあるだろうが、海外でも、強豪と同じスタートラインに立っても、「普段通り」にレースに臨み、「世界基準」の走りが「普通」にできるはずだという実感と自信を掴んでいるという「印象」を受けた、無用な印象かもしれないが・・・。