学生時代の思い出 ― 2012/06/18 01:21
ロンドンオリンピックの陸上日本代表で目を引くのは競歩陣。男子50キロ、男子20キロ、女子20キロの3種目で9選手が代表をつかみ取った。発表の会見の場に(壇上ではないが)小坂忠弘氏が同席していたし、先日、NHKで放送された大利久美選手の番組には今村文男氏も映っていた。(先方はご存知ないだろうが)私にとっては見慣れた顔。我が青春時代に尊敬する先輩が競い合った相手でもある。■30年近く前に通っていた我が母校は競歩の強豪チームでもあった。当時、関東インカレの初日の決勝種目は少なく、競歩はその1つ。複数の選手が入賞すると初日のポイントは筑波、順大、中央、日体大など総合優勝争いをする大学さえも押さえてトップに立つということもあった。■我が母校の競歩ブロックの選手はとてつもない練習量だった。大学単位のトレーニングだけではなく、多摩川などへ出かけていき他のチームと合同練習、毎日が強化合宿のような生活をしていた。メキシコなどへの遠征もしばしば。後にオリンピックに出場する園原健弘先輩の部屋には世界各国で開かれた大会のゼッケン(布製のナンバーカード)がカラーボックスを覆うクロスとして使われていた。■園原先輩は箱根駅伝にも出場した。区間最下位に甘んじ、討ち死にしていくチームメートが多い中で、モノが違うという、この時ばかりは「走り」を披露している。私は駅伝ブロックなのにも関わらずメンバー入りすることさえできない「へたれ」だったのでただただ感服するばかりだった。■園原さんは卒業後、大阪に勤務している時期があった。当時、大阪の生活を私たちに紹介してくれたことを思い出した。朝の通勤ラッシュ時、園原さんが職場に向かって歩いていると、サラリーマンに次々に追い抜かれてしまうというのだ。「あいつら歩くのがとてつもなく速い」「大阪のサラリーマンを競歩選手にスカウトしたい」とユーモアたっぷりに話してくれた。日本一の競歩選手を抜いて行く大阪人、確かに驚異の歩きだ。今年の日本選手権、五輪代表発表で思い出したことの1つでもある。
記録よりも ― 2012/06/18 21:48
18日、福島千里選手のふるさとで行われた壮行会。「『1本でも多く走りたい』そこに全てが集約されていると思う」と福島選手は言った。順位も、タイムも、変わる状況も、あらゆるものをクリアした先に次のラウンドはある。「1本でも多く走る」ということはそれだけいくつもの目標を越えていくことなのだろう。■先日のブログで福島千里選手の自己記録を題材にしておきながらナンだが、福島選手はロンドンオリンピックで「タイム」のことはあまり考えていないのではないかな、たぶん。■予選突破や準決勝で戦うレベルとなれば、当然、そのレベルの記録は必要になるけれども、記録を求めるというよりも「勝負」優先!なのかな。結果として記録が必要になるけれど、とにかく上位に入る「着順」が大事になってくる。もっと言うと「いかに持てる力を発揮するか」ということを考えているのではないかな、あくまでも想像だけど。■オリンピックは特別な場所。本気を見せない奴たちも本気を出す場所。国内のレースや日本人同士の争いとは違う展開になる。力が拮抗しているレースでどれだけ自分の能力を引き出せるか。初めての経験だった北京では、圧倒されて力を出せないまま悔しい思いを抱いた。力を出し切れない悔しさはもう味わいたくないはずだ。4年前より、フィジカルも技術も、メンタルも格段に進歩、実績も残し、成長してきた。持っている力を出す。圧倒されて能力を封じられるのではなく、レベルの高い人たちに引っぱられて、潜在するものまで爆発させたい。その作戦までねってきているのではないのだろうか。■成長した姿を発揮したいというのは、雰囲気や相手に動じることなく、持てる力を出すこと。高いレベルの中で心身ともに研ぎすまし、これまでと違う次元にいくこと。持てなかった自信をつかむための日々。それだけの準備をしてきたはずだという自負。それを試そうとしているのではないだろうか。最高の舞台だ。■会見でも禅問答のような受け答え、具体的な話はしない。記事や原稿を書く者としては「具体的に」と指導を受けるし、指導する。例えば若い記者が「ベストを尽くす」とか「全力を出し切る」という原稿を書いてくると、「ベストを尽くさない奴がいるか!」「『ベストは尽くさない』と言っているなら面白い話だが、ベストを尽くすのどこにニュース性があるんだ」、「何を目指しているのか?」「バーをどこにかけているのか?」「ちゃんと取材しろ!」というぐあいにダメを出すだろう。■しかし、福島選手の禅問答のような受け答えには、細かい数値に表せない訳があるのではないか。勝負ごとは生き物、単純明快に答えの出る陸上短距離でも、1本1本すべて違う。一期一会だ。組み合わせによっても、相手関係でも、自身の体調も全て違う。具体的な数字を上げることで、形に縛られたり、数字がひとり歩きしたり、そんなつまらない経験もしてきた。■ロンドンでの彼女の走りの中に答えはある。その時を楽しみにしよう。【19日改稿】
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