空しいロンドン2012/08/12 01:28

「こんな空しい思いをしたのは初めてだ」「福島に申し訳ない」。僅か3泊でロンドンを離れる中村宏之氏(北海道ハイテクAC代表)は肩を落としていた。普段は昭和20年生まれの67歳とは思えない、若々しく、大きく、しゃきっとした体が小さく淋し気に見える。■ロンドン五輪の福島千里の成績は彼女の実力を知る全ての者にとって信じがたいものだった。メダルだとか、ワールドレコードだとか、今そんな大それたものを手に出来るなどとは思ってはいない。ただ、積み上げてきたものを発揮して、過去を超えてくれるはず。思いっきり戦ってくれる姿を楽しみにしていた。■北海道ハイテクACの監督である中村宏之氏はロンドンオリンピック日本選手団に入っていない。愛弟子の姿は客席から見守った。チケットのシートは偶然か100mのスタート地点後方。手すりを越えて覗き込めば招集を終えた選手たちが待機する姿も見えただろう。選手はゲートからスタートライン後方に並び、ブロックを置き、スタート練習を1度、2度行なう。流して戻ってくるとき、スタート地点後方に日の丸の小旗を並べて陣取る8人の幕別&恵庭の小さな応援団の姿をおそらく福島も見たはずだ。■中村監督は席を離れ、少し高い暗がりの場所から立ち見でレースを見つめた。アイコンタクトは取れたかもしれないが、アドバイスを送ることはない。レースが始まると福島の姿はフィニッシュに向かって小さく小さくなっていった。■本人が一番、悔しいに違いない。この舞台にかけてきた。「目標があるから」と、どんな苦しみにも立ち向かい、辛い思いを乗り越えてきた。中村監督はその道のり、思いを痛いほど知っている。■翌日、福島のいない準決勝、フレイザーが2大会連続金となった決勝を見る。世界のレベルは恐ろしく高い。「良いことだと思います。だからこそ挑む価値があります」と中村監督は言った。2009年以降の記録ラッシュなどで「華やか」「天才」の様に見られている福島だが、本当は地味で地道な積み重ねの上に成長してきている。今回の経験もきっと糧にしてくれると思いたい。

空しいロンドン②2012/08/12 01:52

8月3日、女子100mは追い風が2.2mというコンディションで11秒41。その組(5組)5着。全体の32番目の記録で予選落ち。8月6日、女子200mは追い風0.7m。カーブのきつい1レーンとはいえ24秒14というタイムはとても信じられないものだ。その組(3組)7着、タイム救済を考える余地もなく予選敗退。タイムは出場した52選手中48位だった。そして、8月9日、女子4×100mリレー。土井から市川、市川から福島、福島から佐野・・・すべてでバトンが合っていなかったように見えた。福島を除けばB標準さえ突破していない各自の走力で、武器となるはずのバトンパスが全滅ではどこに浮上の目があるというのか。44秒25は逆ダントツの最下位に終わった。遂に福島から笑顔は見られなかった。