汚れたTシャツ2013/06/17 01:26

もう15年以上も前になるだろうか、北海道マラソンのテレビ解説を宇佐美彰朗さん、伊藤国光さんにお願いしたことがあった。打ち合わせの席だったと思う。一通り打ち合わせが終わり、座が和んだとき、伊藤さんが現役時代、初めて宇佐美さんの練習を見たときの驚きについて話しはじめた。◆宇佐美さんは現役時代、メキシコ、ミュンヘン、モントリオールとオリンピックに3度出場、日本記録も作った日本を代表するマラソンランナー。伊藤さんがその練習を目の当たりにしたのは全日本の合宿に初めて参加したときだったという。その練習量、速さと強さに圧倒されたことを、現役引退後も鮮明に思い出すと述懐していた。◆宇佐美さんは宇佐美さんで、実業団に入って日も浅く、マラソン練習に取り組み始めたばかりの二十歳そこそこだった伊藤さんを印象深く覚えていると話したあと、宇佐美さん自身が全日本の合宿に初参加した頃の思い出を披露してくれた。それこそ日本マラソン界の錚々たる巨星たちが居並ぶ合宿だったという。◆宇佐美さんが朝練習の集合時間に行くと、君原健二さんがやってきた。見るとTシャツが汚れている。宇佐美さんは初め、「なんでこの人は朝から汚れたシャツを着ているのだろう」と不思議に思ったという。その時は気づかなかったのだが、シャツが汚れていた理由があとから分かった。君原さんは、朝練習の更にその前、自主トレで既に数十キロ走ってきていたのだった。「それでケロリとしている」。そのタフさ加減に驚いたが、そうした経験や取り組みは日本マラソンの強さとして引き継がれていった。◆リオデジャネイロオリンピックにむけ、ナショナルチーム構想が示された。チームジャパンとして切瑳琢磨し、長期計画で現状を打開、強い日本をとりもどそうという狙いだ。マラソン日本の伝統復活にも期待が高まる。【補足・追記】Tシャツが「濡れていた」、「乾いたものを着ればいいのに」というものだったかもしれません。また、Tシャツではなくトレーニングウェアだったかもしれません。